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はじまりの、しずけさ

ここまで、来てくださったんですね。
症状の部屋から、ゆだねるという部屋を抜けて、

いちばん奥まで。
ありがとうございます。

ここで、わたしの原点の話を、

少しだけ、させてください。

_____

わたしが、三十五年かけて、

手のひらで教わってきたこと。
それは、つきつめると、たった一つでした。


しずけさ。

 

オステオパシーに、サザーランドという人がいます。

からだの奥にある、かすかなリズム。

そのリズムが、ふと止まる一点を、

彼は「スティルネス(しずけさ)」と呼びました。

 

カウンセリングに、ロジャースという人がいます。

言葉が尽きて、ふたりのあいだに、

ただ「沈黙」が満ちる時間。

 

わたしは、長いあいだ、

この二つを、別々のものだと思っていました。
でも——あるとき、気づいたのです。

サザーランドの、からだの静けさ。

ロジャースの、こころの沈黙。
あれは、おなじ、一つの静けさだった。

_____

ここで、ひとつだけ、

伝えておきたいことがあります。
この静けさは、

「何もない」ではないのです。

水たまりが、風がやんで、

ぴたりと動かなくなった瞬間を、

思いうかべてみてください。

表面は、鏡のように静か。

でも、その下では——

いのちが、いっぱいに満ちて、

次の流れを、そっと、ためている。

止まっているように見えて、

ほんとうは、いちばん深く、

からだが組み直されている時間。

種が、土の中で、いちばん静かに眠っているとき、

いちばん激しく、芽吹きを準備しているように。

深い休息と、大きなエネルギーは、

同時に、おなじ場所にあるのです。

わたしは、これを、

「はじまりの、しずけさ」と呼んでいます。

すべてが、ここから、また動き出す。

リセットされて、生まれ直す。
その、はじまりの場所。

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鍵のかかった、扉の向こうで

 

そして——

わたしが、この静けさに、

はじめて出会ったのは。
二十代の、とある場所でした。

_____

それは、精神科の、閉鎖病棟という場所でした。
鍵のかかった、扉の向こう。

世間が、

「治さなければいけない人たち」と呼ぶ場所。
わたしも、はじめは、
そう思って、足を踏み入れたのです。

_____

でも——

しばらく、そこで過ごすうちに、

わたしの目に映るものが、

だんだん、変わっていきました。
 

そこにいたのは、こわれた人たちでは、なかった。

 

むしろ——
ふつうの人には聞こえない音を聴き、

ふつうの人には見えない色を見ている、

とても、純粋な人たちでした。

 

ある人は、

遠くの誰かの気持ちを、

そのまま感じとっていました。
ある人は、
言葉になる前の世界と、

しずかに話をしていました。

 

いまなら、彼らをこう呼ぶのかもしれません。

チャネラー、ヒーラー、と。
でも、当時のわたしには、

ただ、特別な光だということしかわからなかった。

 

_____

ある日、気づいたのです。
この人たちは、

自分という小さな器を、

軽々と、超えてしまっている。

「わたし」と「世界」のあいだの壁が、とても、うすい。
だから、この三次元から見ると、

痛い。つらい。

 

でも、だからこそ——

ふつうの人が一生たどりつけない場所を、

すでに、見てしまっている。

わたしには、確信が、芽生えました。
この感性こそが、
これからの時代の、主役になる。
いつか、堂々と、
世界の真ん中に立つ日が来る、と。

_____

そして、その確信は、

もう一つ、大切なことを、

わたしに教えてくれました。

この人たちを、

「変えよう」「治そう」「ふつうに戻そう」

——そう思った瞬間に、

いちばん大切なものが見えなくなってしまう。

だから、わたしは、決めたのです。
変えよう、としない。

この感性を、楽しむ。
ただ、となりに、いる。

 

_____

いま、思うのです。
あのとき、病棟で芽生えた、

「変えようとしない」という姿勢が——
三十五年かけて、

ゆっくりと、この手のひらに、降りてきた。

からだを、矯正しない。

行きたがっている方向へ、ただ、ゆだねる。

あの日、一人の人を信じたことが、

いまは、すべての人の、からだを信じる手技に、

なっているのです。

_____

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あなたは、何も、変えなくていい

あなたの中にも、きっと、そのままで、いいものが、あります。
それは、症状かもしれない。

痛みかもしれない。

ずっと、責めてきた自分かもしれない。

どうか、そのままで、いさせてあげてください。


不思議なのですが——

変えよう、としないとき。

そのままを、ゆるしたとき。
ものごとは、ひとりでに、
流れはじめます。

凍った川が、

春の光で、ゆっくりとけて、

また、流れだすように。

あなたは、

何も、変えなくていい。
ただ、そのままで、

ここに、いてください。💗

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